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はさみのおはなし
はさみの写真

(林) 先生はいろいろな道具に対して、非常にこだわりを持っていらっしゃいまが、今回はハサミについてお話をしていただきたいと思います。
先生は、よくハサミは用途によって使い分けた方が良いとおっしゃっていますが、まずは、紙きりのハサミについてどんなものが良いかお話していただけますか。

紙を切るハサミは、グリップが大きいく、刃が薄いものを

はさみのおはなし 話している様子(斉藤) そうね、私達は型紙をボール紙でとるでしょ。厚いものを切るから手首に負担を掛けない様にグリップが大きくて、刃が薄い物が良いの。
と言うのは、まっすぐに引いた線の上を綺麗に切るためには、子供の工作用のハサミのように、刃の厚い物では絶対に綺麗に切れないんですよ。シャープに切れないので、刃は薄い方が良いんです。そして、グリップが大きい事で力が入れられるんですよ。そして、そんなに長い刃である必要がないでしょ?

(林) そうですね、小さな型紙を切る事が多いですから、長い刃は必要ないですね。

(紙切り)ファンクラフトはさみの写真(斉藤) そう、長い刃先は必要ないの。これ位(約5cm)あれば、十分。
これはすごい力があるハサミなんです。例えば、バケツ型のバッグを作ろうと思った時にトップとキルト芯、裏布の三層になったもの同士を、上側と底を縫い合わせて、縫い代を切り揃えますよね。その時に、布きりのような良いハサミを使っちゃダメなんですよ。
キルト芯を切るっていう時に、布きりのような繊細なハサミを使って、そんな厚いものを切っちゃったら、どんどん切れ味が悪くなっていくから、そういう時には紙きりバサミを使うの。 グリップが大きいから、厚いものでも切っていくことができる。三層になったもの同士などを縫い合わせる時のカットは、紙きりバサミを使います。

(林) キルト芯だけを切る時も紙きりバサミを使った方が良いですか?

(斉藤) そうです。キルト芯は、絶対に布きりみたいな良いハサミを使っちゃダメです。紙きりバサミは、キルト芯とか紙きり専用に使います。

布を切るハサミは、重さと、刃の長さが重要

(林) わかりました。では、今度は布きりのハサミについてお願いします。

(斉藤) 本当に私はハサミが大好きだから、いろんな物を試したのよ。ほら、鶴の形してるとかね。私がパッチワークを始めた時っていうのは、パッチワークをする人のハサミはギンガーとか言われていたの。

(林) ギンガーですか?初めて聞きました。

(布切り)クラフトチョキハサミの写真(斉藤) そう?今でも売られているのよ。格好良いし、切れ味も良いんだけど、重いんですよ。だから、疲れるのね。いろいろ使った感じで言うと、やっぱり私は軽いことが第一条件。
後は、2m、3mと長い距離を切り続けるって言う事は少なくて、ちょっと細かいものを切ることの方が多いから、短くもなく長くもない、丁度良い刃の長さ(約7cm)があるという事。それから、やっぱりこれもグリップが大きい方が良いんですね。グリップが大きい方が疲れない。昔、一度、腱鞘炎になったんですよ。

(林) パッチワークをする人に多い様ですね。

はさみのインタビュー 手首の角度(斉藤) そう。結局ね、グリップが小さいのに、ハサミを持とうとするこの手首の角度が良くない。

(林) この角度ですか?

(斉藤) そう、こういう風に掴もうとする角度が良くない。でも、グリップが大きければ、ぱっと掴めるでしょ?

(林) なるほど、小さいハサミのグリップに手を入れようとすると手首に角度がつきますね。

(斉藤) そう、糸きりバサミもそうだけど、グリップが小さいと掴もうとする度に手首に負担が掛かって、絶対に良くないのよ。ぱっと掴める様にグリップが大きくて、軽くないとダメ。
で、なんと言ってもこの布きりは、生地を逃がさない。だからよく布きりバサミでパッチワーク用とうたっているのは、この刃先の所に刻みが入っているの。それだと確かに生地は逃がさないんだけども、縫い代を切り揃える時に、布の端をチョンと切り揃えると、刻みが入っているから、刃にゴミがたまるの。だから私は、使わないんです。
でもこの布切りバサミは生地を逃がさないで切って行くことができて、刃の先までしっかり、カチッと切っていくことができるんです。断然今はこれがおすすめ。いろいろ使ってきて、今、最後にこれにきてます。

(林) 私も、始めにこのハサミを教えていただいた時に、え?これが布きり?ずいぶん地味なハサミだな、思ったんです。外見的にもっとプロっぽい物を使いたいという願望があったので、ちょっとがっかりしたんです。
でも、実際に使ってみてびっくりしました。手元で小さなピースをたくさん切りますけど、サクサク切れるんですよね。

インタビューの様子(斉藤) 本当にそうです。私は、とにかくいろんな種類のハサミを持っているのね。同じ条件で、どのハサミが一番切れ味が良いか、実験したりするのが大好きなのよ(笑)。
それで、もうこれ!っていう風になったの。でも、また2年後3年後、どこかのハサミのメーカーが良いものを出してくると、「これ却下。こっち!」ってなるかもしれないけど、今のところはこれね。でも、この布切りバサミはもう10年以上、一押しになっているから当分は変わらない。これに敵う布きりバサミは、なかなか現れないんじゃないかなと思っています。

(林) 裁ちばさみって本当に手が疲れますから、選び方は大事ですね。

(斉藤) そうね。とにかく長時間使うから、軽くって、そんなに長い刃先のものは必要ないですよ。

糸を切るハサミは、グリップが大きいものを

(林) わかりました。では、先生、糸きりバサミについてお願いします。

(糸切り)ファンクラフトはさみの写真(斉藤) はい。糸きりね。これ、ちょっと大きくて、携帯用にはちょっと向かないかもしれないんだけど、パッチワークってほとんどがお家でする作業が事が多いから、これくらいの大きさがあっても良いと思うの。
携帯用みたいに小さくするには、グリップを小さくするしかないわけですよね。そうすると、無理のある手首の角度になってしまうので、やっぱりグリップが大きいと言う事が大事。
今、私はピーシングや、キルティングをする時はリングカッターを使っちゃうから、その時の糸きりバサミは必要ないんだけれども、昔、リングカッターなんてない時には、早く縫うためには、とにかく右手で針を持ったら、この右手を離したくないんですよ、。だけど、離さないとハサミで糸は切れないから、左手でハサミを使ってたの。(実際に縫う動作をしながら)こう縫ってて、こうしたら、左手で持ってバサっと切ってたの。

(林) (一緒に縫う動作をしてみる)こう縫って、こうやって、左手で切る!こうですね。

糸を切る動作の写真(斉藤) そう。リングカッターのない時代にはね。そのためには絶対にグリップが大きいのが必要だったの。ぱっと掴んで、すっと入れられるっていうハサミが必要だったのね。

(林) 先生は、にぎりのハサミは使われないですよね?お嫌いなんですか?

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